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見えるLAB

目が見えない人が見ている世界とは?視覚障がいをもつ青木さんに聞いてみた

Other 2024.05.22

目が見えない人が見ている世界とは?視覚障がいをもつ青木さんに聞いてみた

コンタクトレンズ「WAVE」を中心とした「目」にまつわる製品を提供するパレンテ。

“見える”をデザインする私たちだからこそ、関心をもっているのが、その対極にある“見えない”世界です。

今回はパレンテでヘルスキーパーとして働く青木隆典さんに話を聞きました。

20歳の頃に病気で弱視になった青木さんにとって、世界はどんなふうに映っているのでしょうか。

青木さんの視力はどれくらい?網膜色素変性とは

ーー青木さん、いつも私たちのヘルスケアをありがとうございます!マッサージ、気持ちいいと大人気ですよね。

青木さん:そう言ってもらえると嬉しいです!今日みたいに暇なときもありますけどね(笑)

ーーだからこそこうして話が聞けるということで…よかったです!(笑)今回は改めて、青木さんにとって世界がどんなふうに見えているのかが知りたくて。青木さんは全盲ではないですよね?

青木さん:興味をもってもらえるのは嬉しいことですよ!そうです、全盲ではなく弱視です。子どもの頃は他の子と同じように普通に視力がありましたが、医者から「20歳くらいでほとんど見えなくなる」と宣告され、本当にその通りになりました。その後も10年周期でガクンと視力が落ちる波がきて、今から5年ほど前、40歳のときにいよいよ1人で街を歩けなくなり、白杖を持つようになりました。

ーー現在はどれくらい見えているんですか?

青木さん:スマホ画面を目の前まで近づけてようやくアプリのアイコンがわかる程度です。こうやって人と話していても目の前の人の顔立ちや表情まではわかりません。それに僕の場合は網膜色素変性の特徴として、光がすごくまぶしく感じるので、太陽光も蛍光灯の灯りも苦手です。日中外を歩くときはサングラスが欠かせません。逆に暗いところの方がよく見えるんです。夜になれば横断歩道の白線や信号機の色も認識でき、歩きやすくなります。だから夜になるとちょっとはしゃいじゃう(笑)

ーー青木さんがまさかの夜行性とは(笑)「目が見えない人が暗い夜道を歩くなんて危なすぎてもってのほか」と勝手に先入観で考えていましたが、やっぱり「知る」っておもしろいですね。

「街とセッション」青木さん流、街歩きの楽しみ方

ーー青木さんの日常についても知りたいんですけど、外出する機会は多いですか?

青木さん:平日はパレンテの本社まで通っていますし、プライベートではバンドでギターを弾いているので、自分のバンドのリハーサルやライブなどもあって、出かける機会は多いと思います。

ーー外出では目が見えない大変さもあると思いますが、逆に「楽しさ」もあるのではないかと。

青木さん:そうですね、例えば通勤など、通い慣れた道では、駅の乗り降りする場所や、駅から会社までの行き方を細かく決めているんですけど、そのコースを外れずに歩けるように、自分のなかでいくつかポイントを設定しているんです。例えば「エレベーターを降りてすぐ右に曲がり、5歩進むとザラザラの壁がある。それを伝って歩き、壁の素材がザラザラからスベスベに変わったところで壁に背を向けると正面が横断歩道」とか。そういう外せないポイントがいくつかあるんですけど、ポイントからポイントまでの間はフリータイム。自分はそのフリータイムを「アドリブ」と名付けて1人で楽しんでいます(笑)

ーーポイントは押さえつつ、フリータイムはその日の気分で街とのセッションを楽しむ…さすがミュージシャン、とても素敵です!

青木さん:フリータイムの場所は、点字ブロックがあったり、人通りや車の交通量が少なかったり、つまり安心して歩けるところです。心にも余裕が生まれるので、わざと少しルートから外れたり、ベンチに腰掛けて風を感じたりしながら楽しんじゃいます!

路上駐車・路上駐輪など予期せぬ障害物がこわい

ーー逆に、街歩きで不安になったり困ったりするのはどんなときですか?

青木さん:通りなれた道でも「いつもと違う状態」になっているとこわいですね。よくあるのが、ポイントにしている建物の壁や道路脇の鉢植え、そして点字ブロックなどが路上駐車や路上駐輪で塞がれているケース。1台くらいなら大丈夫ですが、何台も続いているとけっこう焦ります。そういうときに限って急いでいたり(笑)

ーー予期せぬ障害物があるとポイントは押さえられないし、アドリブを楽しむどころではないですね。

青木さん:それに、さっき「夜の方が歩きやすい」と言いましたが、逆に暗い場所で車のヘッドライトの明かりが飛び込んでくると、昼間の太陽光よりもまぶしく感じて全く歩けなくなってしまいます。親切心で停車して道を譲ってくれる運転手さんもいますが、そのままだと何も見えず進めないので「先に通っていいですよ」と合図をします。これは僕と同じ網膜色素変性の方はよくわかるのではないでしょうか。

街歩きで手助けが必要になるとき

ーー青木さんが街を歩いていて誰かの手助けが必要になるのはどんなときですか?

青木さん:通り慣れた道では、多少障害物があってもなんとかなりますが、初めての道を歩くときはそもそもポイントもないので困ることが多いです。どういうルートで行くか、事前にGoogleマップで調べて、音声案内を頼りに歩くものの、点字ブロックがない道はやっぱり不安だし、目的地の建物が道路の右側にあるのか、左側にあるのかまでは、地図アプリは教えてくれません。そういうときはコンビニなどのお店を見つけて店員さんに聞くことが多いですね。このお店を見つけるのも一苦労なんですが…。

ーー街を歩いていても、たまに白杖を持ったまま立ち尽くしている人を見かけることがありますが、まさに青木さんが話したような状態かもしれませんね。そういう方を見かけたとき、どんなふうにサポートされると安心できますか?

青木さん:こちらから街を歩いている人に声をかけて引き止めることは難しいので、話しかけてもらえるとすごくありがたいですね。道を案内していただく場合、背中を押されるとこわいので、肩に手をかけさせてもらうか、僕の手を引いてもらえると安心して歩けます。たまに通い慣れた道でも声をかけていただく場合もあって、こちらが「1人で行けるので大丈夫です」と伝えても「お手伝いしますよ、行きましょう!」と連れて行かれることもありますが、いつも困っているわけではありません(笑)私のように視覚障がいをもつ人の「大丈夫です」は強がりや遠慮ではなく、「本当に大丈夫」ということなので、そんなときはそっとしておいてもらえると嬉しいです♪

点字ブロックが華やかなストリートアートに!STREET ART LINE PROJECT

ーー2023年にパレンテは点字ブロックの啓発や、視覚障がい者の方々が安心して街を歩ける世の中を目指す「STREET ART LINE PROJECT」に協賛し、オリジナルのコラボTシャツを販売しました。プロジェクトでは渋谷の点字ブロックにアートが施されましたが、青木さんは現地には行きましたか?

青木さん:はい、アート自体は見えませんが、子どもと一緒に行って、どんな絵が描かれているのか教えてもらいました。点字ブロックという目が見えない人向けの機能の重要性を、目が見える人に向けて視覚的に訴えるというコンセプトはすごくおもしろいと思いました!

ーーコラボTシャツの販売サイトの公開にあたっては、青木さんの意見も取り入れられたと聞いています。

青木さん:はい。視覚障がいの人でも商品を購入しやすいよう、ボイスオーバー機能を使ったときにわかりやすくサイトの文章を読み上げるよう、極力シンプルなページ構成にしてもらいました。公開されたページでは実際に自分もTシャツを購入できましたよ!

ーーこうした小さな活動を通して、障がいをもつ人への認識が深まり、一人ひとりにちょっとした気遣いが芽生えたり、社会のインフラ整備が進んだりするといいですね。青木さん、お話ありがとうございました!最後に、青木さんが思い描く理想的な社会を教えてください。

青木さん:目が見えないことでいろいろな人から気にかけてもらい、そこから新しい出会いが生まれることもあるので、感謝の気持ちは絶えません。助けてもらうのはすごく嬉しいと思う一方で、目が見えない僕でも、誰のサポートも受けずにどこでも好きなところに行けるような世の中になったら、それは最高です。身近なところだと、点字ブロックがもう少し増えてくれるとありがたいですね。特に横断歩道…まっすぐに歩くことって目が見えていないとすごく難しくて、気付いたら車道の真ん中を歩いていたという失敗もあります。クリアしなければいけない問題もあると思いますが、点字ブロックが増えるともっとアドリブを楽しめそうです!

STREET ART LINE PROJECT
STREET ART LINE PROJECT×WAVE チャリティ Tシャツ

青木隆典さん(46歳)

網膜色素変性という先天性の疾患により20歳から目が見えなくなる。それを機に盲学校へ通い、あん摩マッサージ指圧師と鍼灸師の国家資格を取得。 現在はパレンテで従業員のヘルスキーパーとして勤務中 三児の父でもあり、ギタリストでもある。

Staff Credit

Text: Shingo Shimojo